国産木材を活用した木質化
これまでミナミ御堂筋の会では、社会実験「御堂筋チャレンジ」を通して、滞在空間創出・歩車分離のベンチを設置し、ベンチの継続的な設置や維持管理のスキームを検証してまいりました。
2021年に実施した社会実験「御堂筋チャレンジ2021」では、利用者のほとんどが今後もベンチを設置すべきと評価し、ベンチタイプによる利用特性・評価では、木製ベンチのニーズが最も高い結果となりました。
その後も、世界の人が訪れるメインストリートである御堂筋にふさわしいベンチの検討を重ねる中で、設置しているコンクリートベンチを対象に、座り心地と意匠性の向上を目的に、【ベンチ座面の木質化】に取り組むこととなりました。
木質化を進めることで、木材の弾性(やわらかさ)と断熱性で利用者が座った時の座面の快適性を確保するとともに、コンクリート建築物が多い都心部に「木のある居心地の良い空間」を創出します。
ミナミ御堂筋におけるベンチの木質化は、国内外問わず多くの方々へのPR効果が高いことが予想され、木製外構の認知度向上に寄与することも期待されます。
※当事業は、令和6年度の林野庁補助事業「外構部等の木質化対策支援事業」として助成を受けております。
実施体制
◆整備
設計:株式会社地域計画建築研究所(アルパック)、越井木材工業株式会社
木材供給:一般社団法人大阪府木材連合会、九州横井林業株式会社
木材加工等:越井木材工業株式会社
施工:越井木材工業株式会社
◆データ収集等
指導・助言等:京都大学名誉教授 今村 祐嗣氏(木材保存分野)
耐久性評価:越井木材工業株式会社
耐候性評価:越井木材工業株式会社
アンケート調査:株式会社地域計画建築研究所(アルパック)
◆リンク(50音順)
一般社団法人大阪府木材連合会
九州横井林業株式会社
京都大学名誉教授 今村 祐嗣氏
越井木材工業株式会社
株式会社地域計画建築研究所(アルパック)
課題への対応、設計上及び木材の使い方の配慮・工夫
◆課題への対応
課題となる木座面の耐久性及び耐候性については、国産ヒノキ材に水蒸気式熱処理を施し、寸法安定性と防腐性能を付与するとともに、材表面に樹脂を含浸させ、紫外線による退色を抑えることでこれらの課題解決を図っています。
◆設計上及び木材の使い方の配慮・工夫
製品寸法は市場で販売されている定番寸法の素材を使い、加工できる寸法とすることで歩留まり向上を図っています。
加工・プレカット・組立までを工場で行い、組んだパネルを現場で取り付けることで施工手間を省いています。
木座面には目地を設け、またコンクリートの間には根太を配置し、水が溜まりにくい納まりとすると共に、木座面はメンテナンスしやすいようにボルトナットで容易に交換ができる設計としています。
維持管理体制
道路協力団体である一般社団法人ミナミ御堂筋の会が、道路管理者である大阪市建設局と覚書を締結し、耐久性あるコンクリートベンチに木質ユニットを占用物件として添加し官民連携で維持管理を行います。
このスキームを構築したことは、道路空間の木質化・維持管理方策に示唆を与えるものであると考えています。
具体的な維持管理においては、施主及び施設管理者が行う日常点検、専門業者が行う定期点検、これら点検を実施した際の補修方法を記載した『維持管理計画書』を作成し、設計会社である株式会社地域計画建築研究所(アルパック)と施工会社である越井木材工業株式会社が、施主である一般社団法人ミナミ御堂筋の会に説明し提案していきます。
林野庁補助事業 外構部等の木質化対策支援事業について
林野庁の補助事業である「外構部の木質化対策支援事業」は、これまで木材利用が低位であった施設等の外構部の木質化により、木製外構の認知度の向上や木製外構に関連する知識の普及並びに情報の収集等の取組を支援することにより、木材の新たな需要を創出することを目的とするものです。
全国木材協同組合連合会と公益財団法人日本住宅・木材技術センターでは、この事業の一環として、木製外構施設を整備することにより、外構部における木材の新たな利用方法の企画及び性能の確認、利用者や社会に及ぼす効果等の把握など先進的な取組の効果を実証する事業(企画提案型実証事業)の支援を行っています。